Max不要論

 1994年、JR東日本にオール二階建新幹線が登場した。新幹線を通勤に使う人が増えているのに増発がままならないから一列車あたりの輸送力を増やすしかない、というコンセプトで作ったと報道されたがちょっと待てよと思う。

 初代MaxことE1系は12両編成で通常車16両分の座席数を持っていると説明されているが、それなら素直に16両編成を作ればよく(当時200系に16両編成が存在)、なぜオール二階建という結論になるのか納得できない。

 確かに二階建新幹線は話題性もあり子供や鉄道ファンの人気も高いが、実用性という点では嫌われる傾向にある(実際同社の在来線215系は冷遇されている)。2階席からの眺めはよいが、乗客の半分は防音壁で景色の見えない1階席に座る。100系や200系では1階に個室や2&2シートといった付加価値をつけたが、1階部分の比率が高いオール二階建でそれをやると定員が激減するため無理。階段があるためビュフェやカフェテリアまでの移動が面倒になり、かといってワゴンサービスもできない。また2階自由席が3+3で新幹線として快適とは言いがたい。車両の単価も高くつく、絶対数が減るので多少は安くなるが、乗客サービス上のデメリットを考えると得策とはいえない。

 E1系登場時、上越新幹線のホームは12両分しかなかったためオール二階建は役に立ってはいる。しかし国鉄時代に作られた新幹線の駅は待避線や高架橋が16両対応で作られておりホームを延ばすのは難しくない。1991年に東北新幹線のホームが延ばされており、上越だけ渋る理由もあまりない。

 1994年当時は200系がまだ老朽化しておらずE1系は純粋な増発用なので6編成のみの製造に終わった。おそらく車両を増備したいが200系は旧式化していてもう作れないから新形式、だったら話題作りのため二階建という軽い気持ちで作ったのではなかろうか?

 1998年になって改良型MaxであるE4系が登場する。8両編成で「つばさ」と併結したり需要に応じて重連16両編成にしたりと運用に柔軟性があり、またエレベーターの設置でワゴンサービスが可能になるなどE1けいの欠点は解消されている。

 しかしこの時代になるとすでに275km/h対応のE2系が登場しており、最高240km/hのE4系の投入に疑問を感じる。確かにオール二階建16両の輸送力は魅力的だが、小型車体の「こまち」が混じって定員の少ないE2系速達列車(現在の「はやて」)に乗客が集中していて苦しんでいるのに遅い列車の輸送力を増やしても解決にならない。

 1990年代、JR東海は300系を「ひかり」「こだま」に入れることによって「のぞみ」の回避能力が上がりダイや作成がしやすくなっていた。東北新幹線でも速達列車以外にE2系を入れるべきではなかったのだろうか? 最近はこの考えになったのか東北新幹線の大半がE2系になり、停車駅の多い「やまびこ」でもその性能が生きている。ひょっとしたらJR東日本は今頃Maxの作りすぎを後悔しているかもしれない。

戻る