2001年にトワイライトと北斗星に乗ったときの旅行記です。

なんとなく、トワイライトエクスプレスに乗りたくなった。

二年前にも乗っているのだが、その後新幹線の食堂車が廃止され、食堂車が希少価値担ったこともあり、もう一度乗りたいと思ったのだ。
以前から気になっていた道内の鉄道博物館の見学とあわせ、四泊五日で北海道へ出かけた。

 

8月20日(月)

 東京へ行き、上野から「北斗星」に乗る。
青春18きっぷではないのだから新幹線でもよいが、特急料金を節約したかったのと、313系や215系に乗りたかったため普通列車で東海道を上る。
221系と117系を乗り継いで大垣から9時3分発の豊橋行き快速に乗る。311系の可能性もあったが運良く313系が充当されていた。
しかし混んでいて向かい合わせの席にしか座れず内装をじっくり眺めることもできない、どうせ間に合うのだから次の列車にするべきだったと後悔する。
豊橋からは10時45分発の熱海行き普通列車に乗車、途中で何回も客の入れ替えがあったにもかかわらず相当混んでいて最後まで座れなかった。
平日の昼間に混んでいるのは明らかに輸送力不足ではないか?最前部に立ってカブりつきをしていたが、東海道もなかなか景色がよい。3時間も立ち詰めで疲れた。

 熱海14時00分発の東京行き快速「アクティー」は楽に座れたがそれでも結構乗っていた。
この列車に使われている215系オール二回建て車は9年前の車両とは思えないほどきれいで、ドアが隔離されているので特急の雰囲気がする。
ボックスシートなので狭いとはいえ内装がきれいなのであまり苦にならない。東京に着くとすぐに京浜東北線に乗り換える。

 上野駅13番線には出発のかなり前から「カシオペア」が入線していた。「北斗星」の前に出るこの列車が見たくて早めに上野駅に来たのだ。
13番線には専用の待合いスペース(乗る前から弁当を広げていたグループもいた)や20時まで営業の売店もあり、この時間帯は完全に北海道夜行専用ホームと化す。
しかし昔はにぎわっていたらしい地平ホームも今は片面ホームの13番線と中電の14.15番線、特急電車用の16.17番線しかなく何となく寂しい。
「カシオペア」出発後しばらくして「北斗星小樽」号が入線してきた。「北斗星1号」を小樽まで臨時延長運転したもので、小樽交通記念館へ行こうと思っている私にはちょうどよい。

寝台券は売り切れとの案内放送がホームに流れるが私は運良くソロを確保している。指定された個室は二階室であったがそこそこのスペースがあり、伝え聞いたような窮屈感が無く非常に快適である。
これで通常のB寝台と同じ料金というのは安い。ところでこの列車に使われている車両は後から少しずつ改造(個室化)されているため仕様差が結構ある。
同じオールデュエット車でも内装に差があるし、個室車の通路に補助座席があったり無かったりする。
個室の施錠方式も異なり私が乗った初期タイプは備品の大きな鍵を車掌が配るが、後期タイプは個室が増えて配るのが大変ということでテンキー方式になっている。
(「サンライズエクスプレス」「カシオペア」など最近はすべてこの方式)

私の場合、食堂車の予約時間が近づいても鍵をかけられずに焦ったし、翌朝回収されるため終着間際に個室を出歩きにくかったりしたので、テンキー方式か「トワイライト」の持ち帰りカードキー方式のほうが好きだ。

 16時50分、定刻に出発。客車列車のため連結器引き出しのショックで結構揺れる。かつて電車は乗り心地が悪いといわれたが、
「サンライズ」発表時はこのショックが無くかえって快適と宣伝されたのは皮肉なものである。二階の高い視点から東京の町並みを眺める。

 予約時刻になったため、食堂車へ行く。ディナータイムの懐石御膳を予約しておいたのだ。
今や日本の鉄道に食堂車は「カシオペア」「北斗星」「トワイライト」にしか残っておらず、すべて夕食は予約制である。
レジ前では、シャワーの予約受付や弁当、各種グッズの販売も行われている。上野駅での売店営業といい食糧確保に苦労しない夜行列車も今時珍しい。
他の夜行列車だと車販はおろか夕方に駅の売店が早く閉まるケースもある。今回の旅行で風呂に入る機会はなさそうなので待ち時間にシャワーの予約をしておいた。
懐石御膳はまあまあおいしかったが5500円もする料理は私の舌では評価しずらいものがある。(私だけでもあるまいが・・・)

 5号車のシャワー室でシャワーを浴びた後はする事もないので歯を磨いて寝ることにする。
北斗星の洗面所にはコップが備え付けられているが、他の夜行列車では特急でもなかなか備え付けられてないので紙コップの持参をおすすめする。
もともと寝付きにくい体質なので郡山や福島で身を起こしてはローカル列車を眺めていた。

 

8月21日(火)

 青函トンネル突入時に走行音が変わったた目がさめるがすぐに眠る。
しかし函館駅構内の明かりがカーテン越しに差し込んでからは時間が時間だけに熟睡できず6時過ぎのおはよう放送で身を起こす。
食堂車開店(6時半)の少し前に行くと隣の車両のロビー室ですでに列を作っていた。
一人旅だったので二人掛けテーブルのある山側に座ったが噴火湾が見えず後悔する。
私は洋定食を注文したが朝から定食は重いらしくサンドウィッチを買って持ち帰る人もいた。
その後しばらく個室から景色を眺めていたが、構造上どうも視界が悪く仕方ないので小樽まで横になっていた。

 10時5分小樽着。予想できたことだが降りた客はわずかであった。甲子園口を出て千数百キロ、初めて改札の外に出る。
久しぶりに北海道の大地を踏んだ。ここからバスに乗り交通記念館に向かう。
小樽交通記念館は、広大な敷地に約50両の車両が保存されておりゲートをくぐると、さっそくディーゼル機関車の除雪車が見えた。
野外展示故、車両の傷みも目立つがそれ以上に気になったのが、車内を改装して原形をとどめていない車両があることだった。
旧型客車の一部が座席を撤去してパネル展示室やカーペット敷きの休憩室になっていた。
旧客は他にもあるからよいが、1両しか展示されていないグリーン車(キロ26)にビデオ装置が設置されてシアターになっていたし(座席の一部が撤去されただけでまだ元の姿を残していた)、2両あるキシ80は両方とも休憩室に改装されていた。
食堂部分は元のテーブルが撤去されて片方の窓側に長テーブル、もう片方に丸テーブルがおかれ厨房部分は自販機スペースになっていた。
2両もあるのだから1両ぐらい元の姿で保存してほしかったし、厨房はともかく食堂のテーブルはそのまま使ってもよかろうと思う。保存展示が目的の施設である以上、展示物そのものを違う目的に使わないでほしい。
この小樽交通記念館では郵便車や車掌車を人形を使って再現している凝りようだけに残念である。普通座席車は全国に結構残っているが、優等車両や寝台車、食堂車は保存されている絶対数が少ないため大事にしてほしい。

 記念館を出た後、手宮線跡を歩くことにする。もともと私はブームになる前から廃線跡巡りに興味があったのだ。
藪に覆われているとはいえ、線路が完全に残っている。小樽市は何らかの形で復活を考えているようだが、市街地を貫通していてもJR小樽駅に通じておらず、たとえイベント用でも不便である。
快速「エアポート」で札幌へ行く、海の景色がきれいである。札幌の雪印パーラーに入る。
店頭のショーウィンドウで超巨大パフェ「I am No 1」(3800円)が目についたがカップルや大食い自慢ならともかく普通の体格の女の子が一人で挑戦することはあるのだろうか? 
ちなみに私は無難に有名なアイスクリーム「ロイヤルスペシャル」を注文した。

 17時22分発の「スーパー宗谷3号」で南稚内の手前の停車駅、豊富まで行き、「利尻」で折り返せば翌朝に札幌に戻れる。
行きの「北斗星」と帰りの「トワイライト」に金を使いすぎていることもあり、周遊きっぷ(札幌・道北ゾーン)で夜行列車に乗って夜を明かす。
「スーパー宗谷」や去年作られた新しい車両ということもあり車内がきれいだがなによりその性能に驚かされた。
エンジンが少しうなるだけでかなりのスピードに達するのである。気動車とは思えぬ、いや普段関西で乗っている電車以上の加速性能である、これで「スーパーホワイトアロー」より遅いとは。

 豊富で下車して一時間ほど待つ。温泉や原生花園に近い観光地だが、特急停車駅に関わらず夜は駅員がおらず、22時前の駅前は完全に静まり返っていた。
昼間は観光案内所があってそれなりににぎわうのだろうが、地方の夜は早く、ちょっと寂しいが同時に遠くへ来たという実感がわく。それでもここから「利尻」に乗り込む乗客も結構いた。
夏休み中いえどもすでにお座敷車の増結が終わっており8月下旬はそんなに混まないだろうという予想は当たり楽に座れた。183系気動車だが車内は「スーパー宗谷」並にリニューアルされていた。リクライニングを倒して眠りにつく。

 8月22日(水)

 目が覚めると雨が降っていた。台風が近づいているようだ。
札幌到着後、普通列車で岩見沢まで折り返す予定だったが、手前の江別まで行く先行列車がuシートを自由席開放しているようなのでそれに乗る。
江別から岩見沢までの普通列車は711系だったが、数少ない3扉化された車両であった。岩見沢からバスに乗って三笠鉄道記念館へ行く。
この地方はバスが発達しているようで、岩見沢バスターミナルはどうみてもJR駅より立派である。「バスは鉄道駅前のロータリーから」という既成概念を持った人にはカルチャーショックがあるかもしれない。

 三笠バスターミナルから少し歩いてクロフォード公園へ行く。
三笠鉄道記念館は旧幌内駅の記念館と旧三笠駅のクロフォード公園に分かれており、2km離れた両地点の交通は1時間おきのバスしかなく不便である。
ここにおかれている80系気動車のフル編成の車内を頼んで見せてもらうが、都合で端の車両しか入れず、グリーン車や食堂車が見れなかったのは残念である。
その後バスで幌内へ、広い敷地に車両が展示され、立派な建物が建っているが雨の平日を訪れる人もほとんどない。
鉄道が廃止され、バスも乗り継がなければならない不便な場所に訪れる人間がどのくらいいるのか、保存車両を整備できるだけの採算がとれているか疑問である。
食堂車使用のレストランはいつ営業しているのだろうか? 
雨の中を長居しても仕方ないのでこれからどうしようと時刻表を開くと、「フラノラベンダーエクスプレス5号」に乗れることがわかったためバスで岩見沢に戻る。
使用車両ニセコエクスプレスは凝った内装のリゾート列車だが、新製後13年たつためかなり色あせている。
近頃珍しくなったシートテレビがついており、運転席のカメラからの走行風景を見ることができるが、液晶が壊れかけ・・・  
以前のリゾート特急はオール指定席だったが、最近は自由席もあるので周遊きっぷでも乗れありがたい。しかし車内はがらがらで1両ある自由席は岩見沢から乗った私だけであった。
根室本線内でクリスタルエクスプレスの「フラノラベンダーエクスプレス2号」とすれ違う。富良野を少し歩いた後、ニセコ車の折り返し「6号」で今度は先頭になる自由席の最前部で前面展望を楽しむ。

 札幌18時28分着、この後どうしようかと思っていたが、同じホームに30分発の「ライラック21号」があったのですぐに乗る。
この列車に使われている781系電車は座席が旧型の簡易リクライニングシートで、北海道の特急車では最低ランクの車両である。
あまりいい車両でもなかったので美唄で下車し後続の「スーパーホワイトアロー27号」に乗る。新製後11年たつがそこそこ快適な車両である。
深川で下車し「スーパーホワイトアロー27号」で札幌に戻る。地下鉄ですすきのへ行きラーメンを食べているとテレビで台風のニュースをやっていた。

 その後、「利尻」に乗る。二晩連続の宗谷本線だが今回は稚内まで行く。
最初は帰宅客で結構乗っていたが、旭川で目を覚ますとガラガラであった。
深夜ということもあり減光されていたが、私自身は座席車の減光は初体験だったりする。
「ムーンライトながら」などに乗ったときは全然減光されなかったのだ。会社の考え方か、それとも特急と快速の違いか。

 

8月23日(木)

 とうとう最北端の駅、稚内に着く。昨日の午後は雨がやんでいたがまた降り出していた。
昨日のニュースで寝台特急「あけぼの」が運休になったと聞いており、同じ長岡ー青森を走る「トワイライトエクスプレス」がどうかしていれば、今日折り返す大阪行きも危ない。
心配だがどのみち7時37分発の「スーパー宗谷2号」に乗るしか帰る方法が無く、札幌駅で駅員に尋ねることにする。
駅弁を買って乗り込む。昔の雑誌で稚内の駅弁は急行の出発前に売り切れる数だけ立ち売りしていると書いてあったが、今でも変わっていないようだ。
600円の幕の内はアルミ容器に包み紙をしただけの外装で駅弁にしては簡素だが、調整したてでまだご飯が温かい。北の自然を眺めながら、少しうとうとした。

 札幌で訪ねたところ、列車はすべて正常運転と聞いて安心する。桑園まで一駅、140系気動車(50系客車の改造)と731系電車に体験乗車した後、駅のコンコースでおみやげを買い「トワイライト」を待つ。
大阪行きのグリーンの客車が入線、いよいよ北海道旅行も大詰めを迎えた。以前A個室ロイヤルに乗ったことがあるのにまた17180円の出費をしてしまい、その上今回は12000円のディナーを予約している。
そのため予算を詰めざるを得ず。初めて4連続車中泊をした。もっとも二泊は個室なので精神的に落ち着くしそれはど苦にならなかった。
ロイヤルは広いだけでなくシャワーなどホテル並の設備があり列車の中であることを忘れそうになる。
北海道の原野を眺めている内に五稜郭に着く。機関車の付け替え作業中に日が暮れた。江差線の車窓から津軽海峡に光が見える。車内放送でトロール漁だと説明があった。
ディナーの予約時刻が来たため食堂車に行くが食事客は私を含め3人しかいなかった。
青函トンネルをくぐる時間帯で景色が見えない(話のタネにはなるが)というのもあるが、なによりメニューがひとつだけで12000円と高いのが大きいだろう。
私は食堂車が希少価値ということもあり無理したが、フランス料理のフルこースは慣れておらず高いかどうかの評価もできない。物好き以外はやめた方がよいだろう。その後個室に戻って寝る。

 

8月24日(金)

 親不知付近で目が覚める。個室内の洗面台でゆっくり洗顔を済ませる。その後朝食予約時刻までサロンカーで時間をつぶす。
個室と違って窓が大きいので明るい感じがする。しかしすべてのソファが日本海側を向いており、立山連峰や噴火湾、琵琶湖が見にくいのが難点である。
北海道まで行きながら縁の無かった夕張メロンが食堂車の朝食のデザートに出た。その後ロイヤルでのんびりしているうちに大阪に着いた。時間がたつのが速い。

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